建築でコンピュータ、する?
2025年3月17日(月) 14:35 JST
三次元プリンタを導入しましたので早速、テストとして、「三方差し」と呼ばれる仕口を出力してみました。この仕口は上図のように、胴差同士が柱をはさみながら竿継ぎのように納まり、それらと直交する形で梁が取り付きます。それぞれの部材は栓(大栓、車知栓)によって締められます。
こういった割と複雑な納まり部では、工作機そのものの加工精度と、入力する三次元モデルを作成する際に設計するクリアランス(遊び)が重要です。工作機が完璧な精度で三次元モデルを現実物として出力してくれれば極々小さなクリアランスを設計すれば(あるいはクリアランスを設計しなくても)問題なく組み上げることができます。しかし現実には多少なりとも加工誤差がありますので、クリアランスが小さすぎればうまく組めず、最悪の場合部品が割れてしまいます。クリアランスが大きすぎればゆるゆるになってしまいます。今回は、とりあえず三次元プリンタを使ってみようという意図が大きいですが、こういった加工精度やクリアランスの設定についても合わせて検討しています。
三次元プリンタを正面から見る(左図)と中央に扉がありその中に加工スペース(少し明るくなっているところ)があります。この三次元プリンタは溶かしたABS樹脂を積層させ造形するFDMタイプ(Fused deposition modeling、熱溶解積層法)と呼ばれるもので、加工中にこの扉から覗いてみると右図のように入力した三次元モデルにそって下の方から少しずつABS樹脂が積み上げられていくところを見ることができます。
上図で少し色が白っぽい部品が今回出力したものです。サポート材を除去し、他部品と組み上げるのは緊張の瞬間ですが、無事、一番上の図のように綺麗に納めることができました。
このHPでも何度か紹介しているように、うちの研究室にはNCルータもあります。NCルーターでは正確かつエッジがたった出力が可能ですが、上部からドリル(ミル)で切削するものなので、今回の三方差のように穴が開いた凹なモデルは苦手です。三次元プリンタは、作成できる形状の自由度は極めて高く、また、出力に要する時間もずいぶん短いのですが、ややエッジが丸くなり、表面には溶かしたABSを積み上げていく際にできる凹凸(網目のようだったり筋状だったり)が確認できます。NCルータと三次元プリンタをうまく使いこなしながら面白いものを作っていきたいと思います。